【感想】なろう最高峰のハイファンタジー【合わせ月の夜】

『テイルズオブファランドール 合わせ月の夜』

作りこまれた設定、張り巡らされた伏線、登場人物に降りかかる非常な現実。

Web小説とは思えないクオリティで送られるハイファンタジー作品。

今回はこの『ハイファンタジー好きなら絶対読むべき』作品「合わせ月の夜」の感想を書いていきたいと思う。


物語のあらすじ

ファランドール。 それは空に二つの月が双ぶ異世界。十七歳の少年が迷い込んだ世界の名前。 彼は多くの記憶を失っていた。自分の名前、過去、そして忌まわしい罪さえも。確かな記憶は妹とかわした約束だけだった。少年をファランドールに呼んだのはエルデ・ヴァイスと名乗る「意識」だけの賢者。少年の体を借りてルーンという魔法のようなものを操る事ができた。賢者エルデは少年にエイル・エイミイという名と、ファランドールで生き抜く知恵と知識を与えた。少年エイルは見返りに自分の体を共用する事を承諾する。エルデは自らの肉体を取り戻す為に、エイルは自分があるべき世界に戻る為に、互いに協力する関係になる。


序盤から過多な情報量で始まるこの作品。物語が本格的に始まる前から自分には合わないと悟る者も出てくるかもしれない。しかし逆に、これは他のWeb小説とは一味違うぞと感じる者、この作品をきっかけにハイファンタジーのWeb小説にハマる者も出てくるだろう作品である。

この物語の主人公エイル、そして頭の中の住人エルデは、お忍びで国の極秘任務についている旅の一行エルネスティーネたちと出会う。数奇な出会いから旅を共にすることになった彼ら彼女らは、様々な国の陰謀に巻き込まれながらも物語が進んでいく。


ハイファンタジーによる濃厚な設定と伏線

合わせ月の夜は、欠かすことのできない数多くの登場人物たちによる、群像劇で物語が進んでゆく。登場人物の多さは、濃厚なファンタジーやSFではお決まりだろう。彼ら多くの登場人物は、ファランドールという世界を動かしていき、その誰もが一癖も二癖もある設定、伏線、思惑を抱えている。そういった中、読者は「月の大戦」と呼ばれるファランドールの歴史の節目の始まりと、その終わりを様々な視点で見届けてゆくことになる。

この作品の最大の魅力は、やはり作り込まれたこの世界の設定だろう。読者に対し、巧妙に物語の途中で謎を落としてゆき、少しずつ丁寧に、時には唐突に解明されてゆく。

その謎は読者のみならず、登場人物たちをも搔き乱してゆく。しかも、それがどれほど搔き乱され踊らされているのかがクロスとの邂逅で知ることができるのだが、一周回って感嘆の声すら出るほど。クソ野郎なのは間違いないですが。

最終章の序盤では震えるほどの伏線回収。この世界の言語が1つだけという理由に確かにその可能性もあったが、突飛すぎてすぐにその考えを放棄していた。この作品が文字通りただのハイファンタジーでないことを痛感させられる。


作り込まれた登場人物

群像劇として送られるこの作品は、当然登場人物が多いのだが、そのどれもがしっかりとした設定で作り込まれており、その大半が物語において重要なものになっている。特に物語の主要人物にもなると核心的な設定が練り込まれており、完結していない現在でもいくつかの大きな謎が残っており、明かされる日がとても楽しみである。ペトルウシュカ兄弟、特に作者曰くこの作品一番の腹黒であるエスカ、そして後半に大きな役割を担うことになるスノウなど。

ここまで登場人物が多くなると当然様々な思惑も動いてゆくのだが、それに伴って物語が急展開する場合もある。それは読者だけでなく、登場人物たちをも唖然とさせてしまう。登場人物たちと共に、「どうしてこんなことになるの??」と現実を受け入れられない場面も出てくる。しかし、そういった物語の運び方もまた、この作品の真骨頂でもある。是非、物語を読んで感じてもらいたい。

私の一番好きなキャラは「キセン・プロット」。なぜこのキャラが好きなのか私にもわからない。実際に人気があるのは「テンリ-ゼン」だろうか?人気投票があれば是非見てみたい。

個人的にだが、物語に出てくる賢者の二つ名や用語がとても気に入っている。最初は「なんだこの難しい漢字は?」と、よくこんな表現を思いつくなという感想しかなかったが、読んでいるうちに、今では良さを理解できるようになった。そういった読者も多いのではないだろうか。好きな二つ名は「月白の森羅」。好きな言葉は「人の筆頭」。


総評

この作品に出会えて本当に良かったと思える作品。3本好きななろう小説を挙げろと言われれば、私の中で間違いなくこの作品は含まれる。10年ほど前からWebで掲載されている作品であり、現在のなろう全盛期到来と同時に一時期休載されていた作品。現在はなろうではなく、カクヨムで掲載が再開されている。

この作品、十二分に書籍化されてもおかしくないクオリティなのだが、現在公開されているページ量が、現在の文庫本でおよそ30巻以上の量のため、出版社も書籍化にそう踏み出せないのかもしれない。硬派な作品のため、もしかしたら今のラノベ界隈ではあまりウケない可能性もあるかもしれない。

この作品の肝は、登場人物・世界観ともに作り込まれた設定、読者を飽きさせない展開である。ライトなものもいいが、もう少し作り込まれたものが読みたいという人にピッタリだろう。

是非とも読んでいただきた作品である。

テイルズオブファランドール 合わせ月の夜

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